Origine Elements ~元素~
兵庫県篠山市【丹波立杭登り窯 】
《YouTube映像》※画像クリック
~丹波立杭登り窯~
天に向かって伸びる登り窯の炎
丹波と耳にすれば、黒豆や栗といった言葉が思い浮かぶこの地区。兵庫県篠山市。
粟鹿山や竹田川といった良質な自然に抱かれた里山で、 平安時代末期からの歴史を持つのが丹波焼。
瀬戸や備前などの陶器産地と共に日本六古窯の一つに数えられ、現在では地名を冠した『丹波立杭焼』の名称で伝統工芸品に指定されている。
気候風土や技術が融合した結果、全国各地で様々な技法や文化が醸成されている中、丹波焼の大きな特長は登り窯で焼成すること。
山の斜面を利用して築造されたトンネル状の窯。曲線状の外観は、まるで生物ような存在感を放っている。
レンガ造りの窯の中は小部屋のように区切られ、横穴から作品を入れる窯入れ作業を終えたら、粘土で密閉して焼成へと移る。
「窯への火入れから逆算して、大小色々なサイズの作品を作っているんですよ」
窯元の三代目・大西文博さんはこう語る。
「窯入れで作品を並べる際、しっかり火の通り道を作るのも大切なんです」
粘土の隙間から垣間見えたのは、まんべんなくオレンジ色に染まった作品たち。
きっと窯出しの瞬間の喜びは、何ものにも変えられないはず。
登り窯で焼くメリットは、焼成時に炉内が一定の高温に保たれること。炉内を徐々に温める「ぬくめ」と呼ばれる作業を経て、横穴から燃料となる薪を投入する本焼きが始まる。
「薪に一番使うのは松の木。乾燥したら軽く扱いやすくなって、松ヤニが瞬間的に温度をたかめてくれるんです」
薪によって炉内の温度が約1300度に達したら粘土でフタをする。
燃料となった松の薪は灰となり、作品に塗られた釉と融合した瞬間、鮮やかな色合いが誕生する。
トータルで約60時間ほどかかる焼成時、「窯焚きの番は昼夜交代制で務める」とのことだ。
窯から吹き出す薪火の熱は、時に痛さへと変化するが、大西さんは火の番人を務める。
それはきっと窯元が持つ文化への責任感に他ならない。
「ウチは50年かけて火を育ててきた。この窯は現在まで四代続いてるが手入れが大切。焼く回数によってコンディションも変わるし、使わないと窯もダメになるんだ」
窯焚きは長時間の体力勝負。
火と正面から向き合う時間の長さに比例して品質の高さとなる。
作品を作り、文化を育てる火に感謝。
そして火と人が発するエネルギーで
今日も窯は守られる。