Origine Elements ~元素~
福島県会津若松市【会津絵ろうそく】
《YouTube映像》※画像クリック
~会津絵ろうそく~
花が彩る灯りの揺らぎ
会津藩の城下町・福島県会津若松市。
新選組の息遣いが残るこの地で、室町時代からの歴史に育まれた特産品が『会津絵ろうそく』。
当時の領主が植樹を奨励した漆蝋を用いたろうそく作りは、戦国時代には一大地域産業として発展。江戸時代には花を描いた絵ろうそくが将軍家や宮廷に献上、会津藩主が財源に活用したことで、この灯りは全国に広まった。
そんな絵ろうそくの歴史を紡ぐのが「ほしばん絵ろうそく店」。
創業1772年、会津藩御用達の名店は9代目の星一栄さんを中心に伝統を守る。
店舗の二階にある小さな加工場。
蝋が冷え固まらないよう、夏でも冬でも室温が常に30度に保たれる。
そんな空間で、10代目となる星雅人さんがろうそく作りに励む。
和ろうそくの製作工程は、串に和紙とい草の髄 (ずい)を巻き円筒の芯を作ることから始まる。
ここに蝋を少しずつ付着させて、ろうそくを太くする。
「今は漆がないのでハゼの実を原料にしている」という。
火で温めた液蝋に芯を浸す作業を繰り返し、カンナで削って表面の大きな凹凸を取り除いていく。
和ろうそくづくりの仕上げとして施すのが「手磨き」と呼ばれる作業。
炭火で50度ほどに温めた蝋に浸し表面を素手で磨く。
そうする事で細かい凹凸を整えて絵付けの際に色が乗りやすくする。
手に残った蝋が空気に触れて少しずつ冷え固まる度に、白の美しさを身に纏うのだ。
「こうして完成した和ろうそくに絵つけをするのは、一栄さんの奥様・久仁子さん。
熟練の技によって筒状の白いキャンバスに花が咲かせていく。
「今は水性絵の具を使っていますが、かつては植物の花や葉をすり潰してして絵具の代わりにしていました」という時代に生まれた、菊と牡丹の伝統柄は今も健在だ。
和ろうそくの灯りは柔らかで力強く、そして長持ちするのが特長。
蝋の溶ける香りが立ち上る中、
大きな火の揺らぎが心を落ち着かせる。
「昔は殿様や大名が家の灯として使っていましたが、時代を経て今は祝い事や仏事に使われるようになりました」
ステータスとして使われていたろうそくの灯りは、人が集まる時期に欠かせない灯りとして役割を変えている。
「自分にとって火は心を温める存在。和ろうそくは癒しの灯りである一方、危険な側面を持つものと思っているので大事に使って欲しいですね」
作り手としての技術だけではなく、使い手としての想いも伝承してきた和ろうそく。
可憐な花が彩る柔らかな灯りの伝統と、会津の歴史の礎となった火に感謝したい。
※ほしばん絵ろうそく店では、絵付け体験も実施しています。
詳しい情報は、お店のウェブサイトをご覧ください。
◯ほしばん絵ろうそく店http://hoshiban.com/