Origine Elements ~元素~
秋田県藤里町【白神山地】
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~白神山地 ~
白神山地に住まう鮎を焼く、地薪の火
秋田県山本郡藤里町。
世界自然遺産に認定された白神山地の麓に位置するこの地には、粕毛川と藤琴川が流れ、
白神山地からの澄み切った清水を運んでくる。
二本の川は、ここに暮らす人々の日々の生活や産業に欠かせない存在となっている。
この地のごちそうは、鮎やイワナ、ヤマメといった川魚たち。川の中に足場を組み、梁(やな)と呼ばれる木や竹で作ったすのこ状の台が置かれた簗場に、
上流からの魚がかかるのを待つ漁法で取っている。
そんな自然の恵みを食べる上で欠かせないのが、白神山地の木々から生まれた炭。冬になれば厳しい寒さに包まれるこの地では、薪小屋や薪ストーブの姿をお目にかかる機会も多く、季節を乗り越える上でも、これらの火は欠かせない存在となっている。
「ガスの火でもいいんだけど、やっぱりこの炭火じゃないと。これで焼くと鮎の頭から尻尾まで残さずに食べられるんだよ」
火鉢の中で静かに燃える炭を転がしながら、藤里町で地域おこし活動に取り組む小森久博さんは語る。
山から吹き下ろす風が炭に触れるたびに、真っ赤な火は輝きを増し、静寂の中、パチパチと鮎を焼く音が耳元に届けば、食欲が掻き立てられる。
焼きたての鮎を頬張れば、パリっと音を奏でる皮や、香り豊かでふんわりとした身の食感に導かれ、頭や骨を残すことなく瞬く間に眼前から姿を消した。
この火鉢には、自然豊かな地によって培われた火を使いこなす知恵が生きている。
煌々と燃える薪の火に大勢の人が集い、手の届く場所にある命をいただきながら、人と人との絆が深まり知恵が受け継がれていく。この地に生きる人にとっての火とは、暖を取るだけのものではなく、食物の命を残すことなくいただくための手段。そして自然と人、人と人を繋ぐバトンのような存在。
薪が燃え、そこに生まれる火があるからこそ人間は豊かに生きている。こんな火と共に暮らす時間は偉大だ。
~火に感謝~