Origine Elements ~元素~
秋田県横手市【横手かまくら】
《YouTube映像》※画像クリック
~横手かまくら~
未来に繋がる灯りが輝く、かまくらの火
東北の中でも特に豪雪地帯として知られる秋田県横手市。
かつて武士の町だったこの地では、武士が住む内町と商人が住む外町とで、それぞれに小正月にしめ飾りを燃やす火祭りや、水神様を祀る行事を行っていた。
その歴史は450年以上を数える。
現在は毎年2月15日と16日の二日間に小正月行事として開催され、国内外から多くの観光客が訪れることもあって、みちのく五大雪まつりの一つにも挙げられている。
その主役は、高さ約3mの巨大なかまくら。一朝一夕では決して作れない冬の象徴は、かまくら職人と呼ばれる方々の手によって、数日かけて作られたものだ。
蝋燭の灯火に照らされた雪室の中では、神座を設けて水神様を祀り、「(かまくらに)はいってたんせ」「(水神様を)おがんでたんせ」と言いながら、甘酒や炭の温かみがある火鉢で焼いた餅をふるまう。
一方、中心街から少し離れた横手川の『蛇の崎河原』。
無数の小さな灯りが輝くこの場所には、地元の中高生やボランティア団体によって作られた約3500個のミニかまくらの火が、美しくまたたく。
ザクザクと雪を踏みしめながら、 一つひとつの灯りの火を見ていると、時間を忘れて引き込まれてしまう。
また、横手南小学校の校庭にも、ミニかまくらが並ぶ。雪室の中にはロウソクの灯りと共に、願い事を書いた「水神様カード」が収められている。
実は昭和時代の中でかまくらの形は少しずつ変化している。裾野が広い旧式のかまくらから、道路の交通量の増加に伴い縦長のかまくらが生まれ、昭和40年代にミニかまくら作りの機運が生まれた。
それでも、雪の中で灯る火の明るさは変わらない。どのミニかまくらを見ても穏やかで優しく、時代の変化に対応しながら、しなやかに輝き続けている。
世代を超えた文化風習がルーツになった今日の横手かまくら。それは、子供による雪遊びの文化を大人が醸成したものであり、大人が童心に帰ったことで生まれたものかもしれない。
無数のかまくらは、この時期姿を表すいわば白い蜃気楼。
でも、小さなかまくらの中で輝いていた灯火の記憶が消えることはない。
文化を未来に繋ぐ源となる火に感謝。
そして、かまくらの火は次の世代に伝承される。